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 一週間ほど部屋から一歩も出ることはなかった。どうも腑に落ちない。あの朝、何故理恵子は部屋を出たのか。何故死ななければならなかったのか。どう考えても答えは出ない。何か手がかりはないかとクローゼットの中をひっくり返す。物という物全てを確認してみる。が、理恵子の物は何もない。一緒に写った写真までなくなっている。理恵子は何を考えていたのだろうか。過去を全て、思い出まで消してしまわなければならない理由があったのだろうか。様々なことがグルグルと脳裏を駆けめぐり、哀しさと怒りが混じった感情が込み上げてくる。理恵子に会いたい。会って、どうしてこんなことになってしまったのかを聞きたい。でも、もう理恵子はいない。声を聞くこともできない。もっと生きていたかったはずなのに。やりきれない気持ちを振り払うように立ち上がり、そうすることに意味があるわけではなかったが部屋中の全ての窓を開けた。南側の窓から一枚の桜の花びらが暖かい風に乗り、ひらひらゆっくりと舞い降りた。窓を開けている最中にリモコンでも踏んだのだろうか。いつのまにかブラウン管はワイドショーのリポーターを映し出していた。
「吉田理恵子さんは、この公園で・・・」
リポーターの声が次第に小さくなり、口パクに変わる。何を喋っているかなんてどうでもいい。ただ、右上に映し出された「吉田理恵子」を見つめ、脳がグルグル回る感覚を覚えた。僕は無意識に部屋の扉を開けて外に出ていた。とにかく確かめなければ気が済まない。携帯電話を取り出し、釈放されたときに聞いた練馬警察署の刑事課の番号を押した。
「もしもし、あの、金山悟と申しますが」
「金山? ああ、この前の」
「はい。あの、岩尾さんはいらっしゃいますでしょうか?」
「岩尾?」
「あ、いや・・」
「ああ、中澤さんのことかな」
「名前はちょっとわからないんですが・・・」
「中澤さんだよ。ちょっと待って」
 どうやらあの岩尾に似た刑事は中澤というらしい。すぐに聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「もしもし」
「あ、金山です。先日はどうも」
「何だ? 自首する気にでもなったか」
「・・違う」
「何がだ?」
「違う。理恵子じゃない」
「はあ?」
「殺されたのは理恵子じゃない。別人だ」
「認めたくないのはわかるが」
「嘘じゃない」
「鑑定結果も遺族の確認も取れてる。間違いなく吉田理恵子だ」
「だとしても、僕が知ってる理恵子じゃない」
「意味がわからん」
「今、テレビで見た。公開されている吉田理恵子という人物は、僕が知っている理恵子じゃない」
「どういうことだ?」
「僕の彼女は、理恵子は生きてる」

○1 <2006.7.29up>

○2 <2006.8.29up>

●3 <2006.10.6up>

○4 <2007.2.6up>

○5 <2007.2.20up>

○6 <2007.2.26up>


<著作権は、作者 山口信乃介に属しています。無断でのコピー・転用などその他一切の類似行為を禁じます>

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by YAMAGUCHI SHINNOSUKE